株式会社ココロマチ取締役ココロココ編集長奈良織恵さん
海と山、南房総市内2拠点を活用したワーケーション
「ココロマチ」にされる存在を目指して名付けられたという株式会社ココロマチは、東京・虎ノ門にある地域プロモーション事業を行う会社で、主に首都圏などの都市や郊外エリアを取り扱っていました。東日本大震災で被災地を取材する中、地方の良さと課題を再認識。首都圏と地方のココロとココロをつなぐウェブマガジン「ココロココ」を2013年12月にスタートさせました。
南房総市白浜町にある「シラハマ校舎」にサテライトオフィスを構え、市主宰の「南房総2拠点大学」の企画運営にも関わっています。ココロココの編集長をつとめる奈良織恵さんは、2019年3月から南房総市内に拠点を構え、2拠点生活をスタートさせました。仕事でもプライベートでも南房総に関わっている奈良さんにお話しを伺いました。
南房総とココロマチが出会って、生まれたもの
地方暮らしの実践者と、地方暮らしに関心がある参加者と一緒に、地方移住や地方暮らしの最前線のコトについて、一緒に考え、交流する場となる「『ローカルシフト』〜地方移住・地方暮らしの今とリアルを考える〜」というイベントを主宰していたココロココ編集部。
そのときゲストの1人として登壇したのが、NPO法人南房総リパブリックの理事長であり、南房総との2拠点生活をされている馬場未織さんでした。
その後、ローカルシフトのイベントに訪れた南房総市職員との出会いがきっかけになり、「2拠点ワークビルディング-南房総から“自分だけ”の働き方を構想するフィールドワーク-」を企画運営することになりました。
馬場さんや、白浜地区にある「シラハマアパートメント」(営業終了。一部の店舗はシラハマ校舎へ移転)の多田朋和さん、三芳地区にあるシェア里山「ヤマナハウス」の永森昌志さんを取材してココロココに掲載し、彼らの拠点を訪れるツアーを行うというものでした。
地方移住、ローカルシフトがテーマの会社として、ローカルに拠点を
ココロココで多田さんを取材したとき、工事中のシラハマ校舎を訪れていた奈良さん。取材により、多田さんやシラハマ校舎のことをよく知っていたこともあり、シラハマ校舎がオープンしたときに、シェアオフィスを一部屋借りることにしました。
小学校の教室半分の広さに、大きな机を2つ、冷蔵庫とハンモック、プリンターを設置。Wi-Fiも完備され、教室の黒板も使うことができる空間です。南房総市に拠点ができたことで、市との打ち合わせに利用したり、会社の研修で利用したり、アイデア出しや、バーベキューをしたりして利用しています。
そして現在奈良さんは、南房総市内の山エリアに自分の拠点を構え、東京と南房総の2拠点生活と、南房総市内での2拠点生活を楽しんでいます。
南房総でのワーケーションの魅力と困りごと
通勤に便利な都内で仕事をするのではなく、わざわざ南房総に来て仕事をするその理由は何でしょうか。
「都内のビルの中で仕事をしていると、陽が沈んで暗くなっていることや、雨が降り始めたことに気付きにくく、外の気温も分かりません。そのため、会社を出る前にスマホで天気予報をチェックして、傘が必要かどうかを確認しています。南房総で仕事をしていると、自然が近いので天気や時間の変化を感じられますし、空気が違います。静かなので仕事に集中することができますし、顔を上げたときに見える景色が違います」
設備的には東京の環境の方が整っているそうですが、アイデア出しや資料作成などは断然南房総が向いているとのこと。シラハマ校舎と、市内にある拠点とでは何か違いはあるのでしょうか。
「家は自宅で、白浜はオフィスなので、やはり何か違いますね。シェアオフィスなので、隣の教室や校庭に適度に人の気配を感じられるのも良いです。あとは海の近さかな。山エリアから海エリアへと向かう道中の景色も楽しめます。東京での仕事場所は、会社かカフェかを選べますが、こちらは海か山かで選べます」
南房総で仕事をするにあたり、いい面だけではなく悪い面もあると思いますが、その辺はいかがでしょうか?
「車移動が基本になるので、財布だけ持ってちょっとコンビニに行くというようなことができませんね。会社のチーム何人かでシラハマ校舎を利用したときは、お昼を食べる時間や何を食べるかなどみんなで意見をまとめて車に乗り込み、食べに行かないといけませんでした。東京だとみんなバラバラで、ふらっと行ってふらっと帰って来ているので、毎日意見をまとめてランチに行くのはちょっと息苦しいですが、研修的にときどき来ているという意味ではコミュニケーションが進んでいいと思います」
南房総で過ごす、ある一日の様子
・木曜の夜に高速バスで南房総入り
・金曜は朝から仕事。オンラインミーティングが1日に2~3回
・畑から材料を収穫し、昼食を自炊
・打ち合わせがあるときは南房総内へ車で出発
・休憩で庭の草取りやメダカにエサを与えて気分転換
・朝早く始めて夕方に終了するときもあるが、19時ころには仕事終了
東京にいるときのお昼はお弁当を買いに行くことが多いそうですが、南房総の拠点では自炊が基本。畑の素材を使うようにして、ふだんよりもよりちゃんとご飯を食べているという奈良さん。
近所の酪農家の方が、目の前の小道を車で通るのが見えたときは手を挙げてあいさつし、都内では聞こえない鳥の声を聞き、雨が降りだしたときは雨の音を楽しみながら、仕事に集中できるのだとか。
これから、南房総市で新しい働き方にチャレンジしたいと思っている人にアドバイス
「南房総はほんとうに東京から近くて、高速バスで90分バスに乗っていれば着くという距離感がすごく魅力だと思います。いきなり移住とか、勇気をふりしぼって始めるとかいうよりは、気楽に行ってみて、関わり始めて徐々に関係性を作っていったらいいのかなと思います。ヤマナハウスのような、ちょっと関わり始めたい人の入口になるような機能もあるので、利用してみたらいいのではないでしょうか」
仕事柄他の地域に行くことも多い奈良さんですが、おもしろいことをやっている移住者が一カ所に固まっているコミュニティが多いと感じているなか、南房総はおもしろいことをやっている人それぞれが自立していて、点在しながらもつながっている感じがあって、そこが心地いいと感じているそうです。
気楽に、はじめの一歩を踏み出してみてください。
関連サイト
ココロマチ
https://www.cocolomachi.co.jp/
ココロココ
https://cocolococo.jp/
南房総2拠点計画
https://minamiboso-2kyoten.jp/