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第20回 馬森牧場 菅野奈保美さん

房総のマッターホルンと呼ばれる伊予ヶ岳の麓に移住し、馬森(まもり)牧場を経営する菅野奈保美さん。
女手一つで牧場を切り開いたという噂を聞き、早速取材に伺いました。
 
■ご出身とこれまでの経歴を教えてください。
 
出身は大阪府です。福岡、長崎、神奈川を転々とし現在の家で13軒目です。
時代の流れに乗りながら、「その時に勢いのある」 さまざまな職業を経験。2016年まで体験型美容外科webサイトの運営を行っていました。馬の飼育とトレーニングに関してはまったくの未経験だったので、移住後から手探りの日々で毎日が勉強です。

馬森牧場の菅野奈保美さんの写真 乗馬の様子

 
■「馬の飼育は未経験」とおっしゃっていましたが、移住と牧場経営どちらを最初に決めたのでしょうか。
 
移住が先です。牧場経営のために移住した訳ではなありません。牧場経営は「成り行き」で始めました。
「馬を飼ってみたい」と思い、飼い始めたら「乗りたい」「撮影したい」という方がいらっしゃったので、体験型観光牧場+宿泊施設をオープンしました。

馬森牧場の馬たち 花飾りを付けた馬

 
■馬森牧場について教えてください。
 
高台にあるので見晴らしが良く静かで、空気の美しい空間です。海も近く、西の富山(とみさん)と富士山からも大きな力を感じ取ることができます。このような環境なので乗馬クラブの雰囲気とはまた違った、ゆるやかで穏やか、そしてカジュアルな馬時間が流れています。馬だけでなく猫もいます。人懐こい猫たちの「猫カフェ」も好評です。
 
牧場の他、ゲストハウスも経営しており、宿泊のお客様だけでなく撮影の休憩場所としてもご利用いただいています。
 
馬森牧場で目にするのは山の緑、星のまたたき。耳にするのは鳥や虫の声、風の音。鼻孔をくすぐるのは四季折々の花の香りです。贅沢なくらい自然や大地と共存できる空間です。

馬森牧場 馬森牧場

 
■女性お一人で広大な土地を開拓されたと聞きました。苦労や思い出に残っている出来事などがあれば教えてください。
 
パートナーも一緒に移住しました。しかし、「作業は手伝わない」という条件付きだったのです。
機械を使って作業しましたが、創成期は慣れない作業で満身創痍の日々が続きました。「お願い右手、明日動かなくなってもいいから今日は動いて!」と思いながら木を切り、小屋を作っていました。
ここは粘土質土壌なので馬の歩ける道を作ることは容易ではありませんし、隙あらば攻め込んでくる草木やイノシシなどとの戦いに終わりはありません。しかし、目の前の問題を不器用でも一歩ずつ片付けていくことで、昨日より今日がどこか進歩しているという実感はあります。頑張っても進歩しない時は、柔軟に自分の考え方を変えます。例えば、現状を受け入れるのも解決方法のひとつと考えます。
 
一番辛かった思い出は開拓4年目でパートナーを亡くしたことです。
以後「これ以上辛い事は何もない。一人でも全て楽しいことばかりだ!」 と考えるようにしました。
牧場が形になった今でも感動にあふれる日々の連続なので「思い出は常に上書き更新」です。忘れっぽいのでブログを毎日更新しています。

馬森牧場の竹林の画像 馬森牧場荒れ地の画像

 

馬森牧場の竹林の画像 馬森牧場の荒れ地の画像

 
■菅野さんが考える南房総市の魅力を教えてください。
 
都会との温度差がほとんどない距離感、豊かな自然環境、草刈りしていれば手を振ってくれる地元の方々。
そして、海の幸・山の幸に恵まれていることです。
「温泉と大きな川、高い建物と高い山以外は全部ある。動物は熊以外全部いる!」(笑) と答えています。
広い土地で馬を扱っていると嫌でも体を動かすので、運動不足だった私も「健康診断ほぼオールA」を維持しています。
気候は温暖で冬至の頃にはフキノトウが芽吹き、夏はひんやりとした山の涼気に包まれています。
また、交通渋滞がないためストレスもなく、よく言えば「のんびり」した人が多いのも魅力ですね。
「ちゃんと年を重ねているな」という充実感があります。

馬森牧場から伊予ヶ岳を望む 馬森牧場の夕暮れ

 
■南房総市への移住・起業を検討している方へアドバイスをお願いします。
 
必要なのは、寝食を忘れるほどの熱意と車の免許です。そして、「あるものを探す」、「ないものは作るかあきらめる」ことですね。都会で「緑や静けさがない」、地方で「道が悪い、買い物が不便」などとないものねだりでは、どこで暮らしても幸せになれないのではないでしょうか。私は都会に住んでいるときは夜遅くまで買物や食事を楽しんでいました。都会での思い出やお気に入りだったものを「懐かしい記憶」として大切にしておけば、たまに訪れた時の楽しみが増えるような気がします。
 
南房総市はネットショッピングで欲しいものが翌日には手に入りますし、日が落ちたら外出したいと思わなくなりました。繰り返しになりますが、「あるものを探す」、「ないものは作るかあきらめる」ことですね。また、新しい地での信頼や足がかりを作るまでに思うよりも長い時間がかかります。ちびっ子乗馬スクールを始め、地元の方との交流は積極的に行っております。
知り合いを増やしながらどんな方にも丁寧な対応を心がけることが大事ですね。
 

馬森牧場

【住所】〒299-2211 千葉県南房総市川上77
【電話】0470-58-0213
【HP】馬森牧場
【Facebook】馬森牧場